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川鰭市郎先生をホストに、東京女子医大元教授の仁志田博司先生と公開対談をして頂きました。
まさに珠玉の文言が輝いています。

 

お二人の同意を得て、全文を掲載致します。

18トリソミーと出生前診断について(4/4)

 

(仁志田先生)

18トリソミーってご存知ですね?21がダウンで。18番目(の染色体)が3個ある病気なんですけどだいたい3000人に1人くらいなんですけど、実は僕個人が今までたぶん100人くらいみてると思うんですけど、少なくとも僕がもった100人は全員がかなり重症な障害をもっていて平均寿命が数か月なんですね。歩いた子供はひとりもいませんし。実は僕は生命倫理というのが一応専門なんですけど本を書いているときに重症度によってABCDと分けてですね。たとえばCって非常に予後が絶対的に悪いとわかっている場合には積極的な治療はしないんですね。っていうクラスを今から30年ほど前に書いたと思うんですけど、例え話として18トリソミーをそこにいれたんですね。僕が書いたのはマニュアルではなくて、そういう患者さんに遭遇した時に考えるひとつの資料・糧として書いたんですけど、マニュアルのように使われて18トリソミーはクラスCだから治療しないとかなんとかなってしまったんです。川鰭先生がおっしゃったように大分の県病院でうまれたお子さんで、僕が会ったのは7、8歳の頃かな。むこうから走ってきてですね、主治医に抱きついたんですね。それで彼は18(トリソミー)っていうからね、間違いじゃないか、もう一回調べてみたらって。18トリソミーにはモザイクってのがいますからね。そしたら彼はですね、レギュラーですって。おそらくある程度知能は遅れてますけれど自分で歩いて、自分でご飯食べて。ぼくは初めてみたんですね。そしたら18トリソミーの家族の会っていうのがあって、その中には何人かいるんですね。ですからですね、ほんと僕らは医者としてみているのはほんの一部なんですね。

 

(川鰭先生)

まあ確かに全体としてはそういう短命であったりするということは間違いない事実だと思うんですけど、すべてそこにあてはめてしまうというのはそうじゃない子だけを必要以上にピックアップすることと同じくらい危険なことだと思うんです。

岐阜の皆さんは僕が一昨年およびした岩元綾さんって方の講演会を聞いてもらった方もこの中にいらっしゃるかもしれないけれど、彼女はダウン症なんですね。21番(染色体)が3本ある。最初は大学まで出た人っていうから絶対モザイクだっていうふうに聞いていたんですよ。ある方を介して、いいえとんでもないモザイクでもなんでもなくまさにそのものずばりですよ、と。ということなんですね。じゃあこの人はほんとにまれな成功例なのかどうかというところに今すごく疑問があるんです。だから行政のみなさんも一緒になって、ダウン症のお子さんって結構いらっしゃるじゃないですか。普通の教育をしたらだめかもしれないけどもそういう子たちに合わせたいろんなことをやっていくといろんな能力をもっともっと発揮できてその子たちの将来がかわっていくんじゃないかな。中絶するよりも先にそっちをやらなければと思っていて。

 

(仁志田先生)

今先生が言ったことはものすごく大切なことですね。新しい出生前診断、非侵襲型の出生前診断って新聞やなんかでお読みになった方いらっしゃるんじゃないかと思うんですけどね。お母さんの血液とってね、アメリカに送ると99.9%の感度と特異性でダウン症かわかる。今、一万人くらいされてるんですね。(結果が陽性だった方)そのほとんどは中絶を選んでいますね。今先生がおっしゃったようにダウンのお子さんはですね、間違いなく21番(染色体)が3本あったとしても、染色体はですねここにある印刷物みたいに同じ文字ではないんですね。情報は遺伝情報ですけれどもものすごく複雑にからみあってタンパクができて、タンパクがまた絡みあってですね。ですから先生がおっしゃったように間違いないダウン症でも大学に行く位才能が育っても学問的におかしくないんですね。そういう可能性があるのにですね、もしかするとたぶんあと数年たつと日本のダウン出生率は10分の1になっちゃいますよね。言葉をかえるとですね。いわゆる優性、いいものを選び悪いものを除くという私達が陥ってはいけない考えですね。優性思想がこの出生前診断に入ってくる。もうちょっとみんなですね、国民的な議論をしないとですね

 

(川鰭先生)

まあ親御さんが自分の子どもが無事であってほしいと願うことは時代を経ても一緒だと思うんですよ、だけどその無事であってほしいという無事の意味というのがなんか妙な意味になってくるとちょっとこわいものになりそうだなという感じですかね。18(トリソミー)に関してはですね。実は急転直下で一昨日位にですね。Aさんという芸能関係の方が、自分の子どもが18トリソミーで死産しましたということをカミングアウトされたんですよ。

アイスバケツチャレンジをやった中でALSだけじゃなくてこういう病気もあるということを知ってくださいということで彼が言ったんですね。実はある人を介して僕と今つながっています。18トリソミーっていう病気をみんなにもっと知ってもらわなきゃいけないし子ども達が生きられる範囲をどうやって過ごしているのかっていうのをみんなに知ってもらいたいというのが彼の望みでもあるので近々ひと騒ぎおこすつもりでいます。みなさんぜひ知ってください、という騒ぎをおこすつもりでいます。で、彼もとにかく自分は非常につらい思いをしたけれどもその時にいろいろ本を読んだりご家族の闘病記をみたりしていろいろ勉強させてもらった、と。だから自分としては何か恩返しできることをしたいからぜひ一緒にやりましょうと言ってくれていますので、どういう形になるかはわかりませんけどやりたいと思ってます。生命倫理はまさしく仁志田先生のどストライクなところで3年前かな、ウルグアイの世界周産期学会でクロージングレクチャーですよ。生命倫理ということを非常に強くといていただいた。で、海外の講演も何度も拝聴させていただいているんですけれども一番印象にのこっているのはシンガポールでやったアジアオセアニア周産期学会で先生がレクチャーをされたんですけども「25週の子がうまれたという情報がはいった。私と私の同僚は分娩室に走っていった。私はただちに挿管し同僚に点滴をしろと命じた。どうしてかわかるか。挿管する方が簡単だからだ」とおっしゃっていたんですね。そこから講演が始まっていったんです。ただ日本の周産期医療、特に新生児医療っていうのは世界一ですからね。世界で一番赤ちゃんが死なない国。来週私はメキシコにいくんですけどメキシコでその話をしてくれっていうんですけど、私は産科医なので筋がちがうぞっと思って。でもそういうことをちゃんとやっていこうと思っています。

というわけでそろそろ時間なので仁志田先生、最後にひとこと。

 

(仁志田先生)

先生の応援にいきますから。先生の活動を応援にみんなでいきましょう。

 

(川鰭先生)

どうもありがとうございました。

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